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さる2002年9月8~12日の5日間,スウェーデンのストックホルムにて第26回国際泌尿器科学会が開催されました。通常ストックホルムはこの時季すでに秋の気配が色濃く朝晩は肌寒いことが多いようですが,今年は観測史上最高とも言われるほど暑く,半袖でも汗ばむほどでした。会場となったInternational Fairは,街の中心からcommuter trainで10分ほどの郊外にあり,やや不便な印象がありましたが,学会参加者には期間中公共の乗り物(地下鉄,バスなど)のfree passが配布されました。しかしストックホルムに到着するまで会場がどこなのか分からず(announcementや学会home pageで探したのですが,私には最後まで見つかりませんでした),SIUならではの(?)casualな感じがしましたが,実際はなかなか首尾よく運営されていると思いました。国際学会に参加して感じることですが,欧米では適度にルーズでありながら,そう不足なく淡々と運営されているのにいつも感心させられます。
Main hallでは主にState-of-Art LectureやDe-bateなどが行われました。もちろんすべてのsessionsを聞いたわけではありませんが,印象に残ったものとしては,“The Role of Robotic Surgery in Urology”,“Medical Management of BPH”などがありました。前者はDr.Abbouが行いました。まだ改良の余地は多いと思いますが,すでに腹腔鏡手術が泌尿器科手術の多くにおいてstandardになりつつある現状を考えると,昨年までの「へえー。こんなこと自分たちがするのか」といった感じではなく,現実感を持って聞き入っている自分に,改めて昨今の技術進歩の速さを痛感しました。一方後者には,ここ10年間α1-blocker一色であったBPH治療法に新たな変化を感じました。すなわち,BPHの自然史を考慮した治療法といった概念です。「ずっとα1-blockerで治療を継続すると最後はどのような転帰をとるのか?」,「将来尿閉になったり,手術が必要になる患者はどれくらいなのか?」,「ではどんな患者がそうなるのか?」など,多くの泌尿器科医が漠然と感じていた疑問が,10年余り経過して共通の問題として認識されてきたわけです。具体的には5α-reductase inhibitorとα1-blockerとの併用療法が挙げられます。現在ある症状(LUTS)はα1-blockerで改善させ,将来有意に排尿障害が進行すると予測される症例(例えばPSA高値,前立腺体積が大きい症例)には5α-reductase inhibitorを併用して尿閉や手術が必要になるリスクを軽減しようとする方法です。興味深い方法論ですが,さらに客観的な長期観察が必要と思われます。
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