印象記
モンテカルロ国際乾癬ワークショップ「分子,細胞レベルから探った乾癬の発症機序—今後10年への展望」に参加して
田上 八朗
1
1東北大学医学部皮膚科
pp.926-929
発行日 1993年9月1日
Published Date 1993/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412901014
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
戦後約10年,場末の映画館で「哀愁のモンテ・カルロ」という映画をみた.それも3本立てで,別の映画をみにいったついでにみたものであろう,筋も忘れてしまったが,青い海を見おろす岩山を恋人たちがドライブするシーンは印象的だった.その後,女優のグレース・ケリーが王妃となったこのモナコ公国の国民は,世界でバチカンに次ぐ小さな国土にとばくの収益のゆえに税金を払わず暮せるが,もしも王室に王子が生まれないとフランスに合併される運命にあるユニークな国であるという知識ぐらいが頭の隅に残っていた.
ところが屠蘇気分のまだ残る本年1月,英国のGreaves教授から,突然急な学会招聘状が届いた.その場所はモンテカルロ,3月25日と26日の2日間世界中から30名ほどの乾癬研究者が一堂に会し,病因を徹底的に討論する会に出席しないかと書かれている.フランスと聞くと,かつて旅券から航空券まで一瞬にすられた悪夢のような思い出が浮かぶ.しかし,コート・ダジュールならさほど治安も悪くないであろう.緯度的には仙台より北なのに,ヨーロッパでは南国とされており,3月末ではどうなのかという興味はあるし,かつての映画の記憶も心をそそる好奇心となって,学会への緊張感と交錯する.というのは,私に与えられたテーマが「臨床からみた乾癬の病因」とまずは,かなり気の重くなる準備を要するものであったせいもある.
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.