連載 皮膚病の現状と未来・2
ヒト乳頭腫ウイルス感染症(その2)
川島 真
1
1東京女子医科大学皮膚科
pp.214
発行日 1992年3月1日
Published Date 1992/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412900559
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遺伝子工学の発展によりヒト乳頭腫ウイルス感染症に関する新しい知見が次々と報告されている.疣贅の臨床像,組織像の詳細な観察により,これまで尋常性疣贅あるいは足底疣贅としてまとめられていた中にも種々のバリエーションがあり,それが異なるウイルスタイプによることが明らかにされている.
角化性変化に乏しく,ほぼ扁平でわずかに皮紋の乱れをみるだけで,皮膚科医でも余程の眼力がなければ見落としてしまうような変化しかない足底疣贅(斑状疣贅との仮称が提唱されている)が,新しいタイプである60型によることが示され,またこの疣贅から足底表皮嚢腫の形成に至ることも確実になった.また,褐色から黒色調を呈する特徴を有する疣贅からは,これまた新しいタイプの65型が検出されている.これらの知見は,ややもすると子宮頸癌を扱う婦人科医やウイルス学者による研究成果ばかりが話題となっているヒト乳頭腫ウイルスの分野において,皮膚科臨床医の面目躍如たるところであろう.
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