- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
化学療法施行時における頭皮の冷却は,頭皮への血流低下,毛包の代謝活性低下を介して脱毛を抑制するとされている.著者らは,ステージⅠまたはⅡと診断され術前術後補助化学療法を実施される18歳以上の女性早期乳癌患者117例を対象に,頭皮冷却装置の有用性について非無作為化前向きコホート試験で検証した.患者を頭皮冷却群101例と対照群16例に振り分け,頭皮冷却群には,抗癌剤投与30分前から投与後90分ないし120分の間,頭皮を3℃に冷却した.主要評価項目は,化学療法終了4週間後における,Deanスケールで患者自身が評価した頭皮の脱毛の程度で,副次的評価項目として,化学療法終了4週間後における,質問票で評価したQOLの向上,頭皮冷却に関連した有害事象(悪寒,頭痛,頭皮の疼痛)の発生件数を評価した.
患者の平均年齢は53歳,化学療法の施行期間は平均2.3か月であった.実施されたレジメンに関しては,ドセタキセル(75mg/m2)+シクロホスファミド(600mg/m2)の3週間ごと4〜6週投与が最も多く,頭皮冷却群で76例(75.2%),対照群で10例(62.5%)を占めていた.化学療法終了4週間後,脱毛面積が50%以下にとどまった症例数は,対照群0例に対し頭皮冷却群では67例(66%;95% CI,56.2〜75.4%,p<0.001)に上った.質問票におけるQOLの評価では,6つの質問項目のうち4つにおいて,頭皮冷却群の回答が対照群に対して有意に良好であった.頭皮冷却に関わる有害事象に関しては,106例のうち104例(98%)に悪寒,43例(41%)に頭痛が,75例(71%)に頭皮の疼痛の訴えがあったが,有害事象が原因で頭皮冷却を中止した症例は3例(2.8%)にとどまった.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.