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T細胞免疫の自己寛容機構として,胸腺内で胸腺上皮にAire(autoimmune regulator)依存性に末梢組織自己抗原が発現し,T細胞教育の中枢寛容,つまりnegative selectionが行われることが知られている.近年,マウスおよびヒトの2次リンパ組織において,胸腺外にもこのAireを発現する細胞,つまりeTACs(extrathymic Aire expressing cells)が存在すると指摘されている.しかし,その特徴や免疫寛容への機序は明らかにされておらず,この論文はeTACsの由来およびその免疫寛容機序の一端を明らかにした論文である.GFP(green fluorescence protein)という蛍光蛋白をAireとともに発現する遺伝子改変マウスを用いた骨髄移植実験を行うことで,eTACsが骨髄由来であり,MHC class Ⅱ強発現,CD80低発現,CD86低発現,EpCAM強発現,CD45低発現という表現型の抗原提示細胞であることを示した.さらに,膵臓組織特異的抗原をAireとともに発現する遺伝子改変マウス,および,同抗原に特異的なCD4+T細胞を用いることで,eTACsは制御性T細胞を必要としない機構によってCD4+T細胞を不活化することができること,そして,その機構はCFA(complete freund’s adjuvant)による自然炎症刺激を起こしても破綻しないことを示した.近年,中枢免疫寛容を補塡しうる,末梢リンパ組織での自己免疫寛容機構の存在が指摘されており,eTACsの存在は,その重要な因子であるといえる.末梢免疫寛容機構の解明は,自己免疫疾患の発症機序の解明や腫瘍細胞の免疫回避機序の解明などへと展開していく可能性も考えられる.皮膚科疾患領域も含めて臨床的意義も大きく,重要な報告と思われる.
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