連載 皮膚病理の電顕・21
付属器腫瘍(X)—石灰化上皮腫(1)
橋本 健
1
Ken Hashimoto
1
1Department of Dermatology, Wayne State University School of Medicine
pp.304-306
発行日 1983年3月1日
Published Date 1983/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202817
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図56前図まででエクリン汗腺系の腫瘍を記述したが,本図では毛に由来する腫瘍を取り上げよう.毛には毛皮質(cortex)と毛小皮(cuticle)があり,前者が毛幹の大部分を占め,後者はその表面を被覆するウロコ状の鞘にあたる1).何故皮質というかというと,動物の毛では毛髄が良く発達しているので,その周囲を包む皮という意味である,人毛では毛髄の発達が悪いので皮質が毛の実質となる.ここに記述する石灰化上皮腫(calcify—ing epithelioma或はpilomatricoma, pilomatri—xoma)はこの毛皮質に向った分化を示す毛の腫瘍である.
多くの附属器腫瘍がそうであるように,臨床的に診断の決め手となるような特徴はない.石灰化が著明な例では,触診すると固く触れる皮下結節を作る(A).ほとんどの例は単発し,好発部位を持たないため,生検により診断がついた時点では臨床写真が撮れないことになる.本例は多発した腫瘍が顔面頬部にみられる.多発型には家族性で強直性筋萎縮症(myotonic dystrophy)を合併する例が10例程報告されている2).本症例にはそのような症候はみられなかった.
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