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小児湿疹は体質的な皮膚素因が病因的に一義的意味をもつアトピー性皮膚炎の乳児期,幼小児期に相当する病型が大きな比率を占めている。そのため成人の湿疹群に多いアレルギー性接触性皮膚炎での治療の根本原則が接触アレルゲンの検索及び,それからの逃避であるのに対して,小児湿疹では接触アレルギーが問題になることはむしろ稀であり,湿疹病変を悪化させる諸因子を避け,自然に軽快ないし治癒状態に至る時期まで上手にCont-rolすることが大原則である。故に治療は必然的に対症療法であり,小児湿疹に対する根本的な特別の治療法はあり得ない。外用軟膏療法が中心となる。そのため治療の第一歩は患者の家族,特に母親に小児湿疹が体質的な病気である点及びその予後について十分に説明し治療上の注意点を教えることである。特に素因の強い場合,症状の高度の場合には事情が許せば短期間入院させると共に外用療法を習得させることが望ましい。家族に年寄りがいる場合は,いまだに小児湿疹,特に乳児湿疹を胎毒といつて体内から毒が出る現象と見做し,軟膏療法その他では皮膚病変の治療を嫌うことがある。また一部の地域ではやはり体内の毒を流し出すといつて額,背部等にカミソリ等で線状の切り傷を作り瀉血する習慣が残つている。次に治療および治療上の問題点い注意事項についてat randomに列挙してみる。
1.局所外用療法が治療の中心である。症状に応じて適当な軟膏療法を行う必要があるが,多くの場合はステロイド含有軟膏のみで十分のことが多い。湿潤傾向ある病巣にはステロイドにネオマイシンを加えた軟膏の方がより効果的のことがある(外国での報告ほどネオマイシンによる感作は実際には多くない)。我々の外来では乾燥性,湿潤性病変共にステロイド軟膏に硼酸亜鉛華軟膏ないし0.5%〜2%のイクタモール棚酸亜鉛華軟膏を重ねるいわゆる重層法を好んで行なつており適応範囲の広い良い方法だと思つている。
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