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(前号から続く)
現在の疾患は,黄疸が14カ月続いたのちに発症した。初め手に出現し,指節関節屈面を越えて手掌に拡大した。その後間もなく黄色がかつた斑が一側の眼瞼の内眼角付近に生じ始め,次いで他側眼瞼のちようどそれと対称的の部位に現われた。この斑ははなはだわずかに高まり,明らかには硬結を示さず,その拡大はきわめて緩徐であつた。1850年の早い時期に,この症例の蝋模型を2個作製した。この時には顔面の斑は上述したとおりの状態であつた。手掌および指節関節のひだに接する隆起に沿つては,黄色がかつた,不透明,不規則な,やや高まつた線状病変が存在した。母指,諸指の第1指節関節,手根の内側面および内面の発疹には,結節性隆起にしだいに移行するのが見られた。肘と膝には明らかな結節がいくつか存した。罹患部には圧痛があつた。患者の体の全表面は鈍いレモン色様の色調を呈した。種々の療法を用いたが無効であり,疾患は徐々に進行する傾向を示した。患者が現在診療を受けているStartin氏の好意によつて,現在に至るまでわれわれは患者の観察を続けている。黄疸はいまだに存続し,おりおり肝症状の再発によつてその色調が濃くなつている。全皮膚はくすんだレモン色の色合を呈する。この7カ月の間に発疹はますます結節状になつた。とくに右手の指節関節背面ではそうであつた。右肘の融合性結節のつくる斑は,蝋模型をとつてから,かなり増大した。肘は両側とも同様におかされている。また,右膝,足の親指の上面,両耳介にも結節が見られる。手において斑状型から結節型への漸次的移行がはなはだ明瞭なので,両型の本質的関係は証明される。症例Sheriffにおいて耳介,肘,指節関節,その他にある結節は性質が同じである。それは堅く,表面はむしろ不整であり,よく観察すると真皮内の病変によることがわかる。表面の所々に毛細血管の見えることがあつて,ぶちの外観を示す。
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