思いつくまま
某月某日,月曜日
藤浪 得二
1
1大阪大学
pp.821
発行日 1967年7月1日
Published Date 1967/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200190
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日曜の翌日とあるので覚悟の上だが外来は満員。新旧患者の診察をすませてから学生のポリクリ。それから廻診と続く。今日は新病棟へ移転してからの初めての廻診なので楽しみであつたが,皮膚癌で頭蓋の半ばを破壊され憔瘁しきつた患者が入院しているので病室にはいるのが気が重い。気付いた時はまだ米粒程の疣状のものであつたというから,最初に診察した医師の責任も重大であるが,患者の方にも,もつと癌の知識があつてほしかつた。皮膚の癌は眼で見られるし,触れることも出来る。早期発見と早期治療とはともに可能な筈であるのに,こんな手のつけようもない患者に,尚,出くわすのはどうしたことだろうか。皮膚癌は動物実験でも作られるし,その組織は何時でもたやすく切取つて検索できるという癌の研究には最も便利な代物であるから,癌を征服する者は皮膚科医であるとも考えるが,此は思い上がりだろうか。
廻診をすませると友人が赤ん坊を診察して呉れという。Portwine stainであるから成形手術かカバー・マークによる外仕方がない。それでも女の子だから嫁入りに差し障りがあると嘆く。医学の進歩した今日,赤あざ一つ治せないのかと思つているらしく,甚だ面目なかつたが,そう思うのも無理のないことだ。ひそかに,積極的になおせる皮膚病はいくつあるか勘定してみた。
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