Derm.2013
電子顕微鏡のご来光
井上 卓也
1
1佐賀大学医学部内科学皮膚科
pp.91
発行日 2013年4月10日
Published Date 2013/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103648
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私は医学部を卒業後3年間大学病院で働いた後,病理学教室の大学院で4年間研究を行いました.主に,皮膚癌と線維芽細胞や脂肪細胞との相互作用について細胞培養の手法を用いた研究です.このとき自分が培養した有棘細胞癌を電子顕微鏡で観察したのが,私と電子顕微鏡との出会いになりました.その後,脂腺癌,脂肪肉腫,悪性黒色腫,Merkel細胞癌などの腫瘍の診断に電子顕微鏡を用いてきました.
とは言うものの,私は電顕試料の作成から電子顕微鏡での観察まで,1つとして一人でできません.すべて病理学教室の技官さん頼りです.硝子ナイフの作成,ウルトラミクロトームを用いた試料の薄切など教えていただきましたが,自分のものにできず,電子顕微鏡写真も横について撮影していただいています.身に付かなかった薄切作業のなかで,薄切された切片の光による干渉色を見ることで切片の厚さがわかるということには感動しました.その銀色や金色の光がまるで初日の出のように思え,眼に焼付いています.電子顕微鏡で観察できるように試料を作成するだけでも大変な作業であり,電子顕微鏡を発明した先人の「光学顕微鏡で見えない世界を見たい」という執念には感服するのみです.私だったら途中であきらめているでしょう.
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