--------------------
文献紹介 水疱性類天疱瘡におけるepitope spreading現象の多施設前向き調査
西村 真由子
1
1慶應義塾大学
pp.516
発行日 2012年6月1日
Published Date 2012/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103343
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)は,表皮―真皮境界部の接着に関わる分子であるBP180とBP230に対する自己抗体によって表皮下水疱をきたす自己免疫性水疱症である.BP180とBP230にはそれぞれ自己反応性のB細胞およびT細胞の標的となるエピトープが複数存在することが示されている.今回著者らは,多施設前向き調査にて,BP患者35人を12か月間にわたり追跡し,BP180とBP230におけるepitope spreading(ES)現象とBPの重症度および臨床経過との関連性を調べた.具体的には,BP180とBP230の一部の領域に相当する組み換え蛋白を作製し,ELISA法により各領域に対する抗体の有無を経時的に調べた.その結果,35人中17人にES現象が生じていることが示された.ES現象は主としてBPの病初期に起こり,診断時の重症度に強い関連性がみられることが判明した.また,BP180細胞外ドメインに対する抗体産生は,BP180およびBP230の細胞内ドメインに対する抗体産生に先行していた.さらに,BP180細胞外エピトープおよびBP230の細胞内エピトープに対する自己抗体は,BPの臨床経過中の重症度と相関していた.以上の結果は,BP180の細胞外ドメインに対する抗体産生はBPの発症において重要な出来事であり,それに引き続いて起こる分子内および分子間でのES現象はBPの臨床経過に影響するとの考えを支持するものである.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.