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皮膚科医は,薬疹について他科の医師から依頼を受けることが多々ありますが,初めて診察する患者さんでは,皮疹から薬疹の臨床型を診断できたとしても,投与されているどの原因薬剤によって起こっているのかを突き止めるのが容易でないことがあります.薬疹には多くの臨床型があり,原因薬剤によって,頻度の多い薬疹の臨床型がありますが,医薬品の添付文書にStevens-Johnson症候群(頻度不明)などと書かれている薬剤は山ほどあるわけで,抗てんかん薬のように比較的重症薬疹の頻度が多い薬剤など,ある程度「あたり」をつけて,中断すべき被疑薬を絞り込むこともあります.しかも,毎年新規の薬剤が発売となって,その薬剤が起こす薬疹の臨床型まで,薬疹患者さんが受診される以前に情報として知っておかなければ,薬疹かどうかもわからず見過ごすことさえ起こりえます.
話は変わりますが,テレビによく登場されている「さかなクン」は約5,000種(「ギョせんしゅ」と発音されていますが)の魚の知識が頭に入っているらしいです.彼の魚への思い入れにはいつも感心させられますが,それぞれの魚の名前の由来,うろこやひれの数など細部にわたりできるだけ正確に把握し,絵に描いているそうです.教科書を見ると,皮膚科学という豊富な知識を必要とする臨床医学のなかでは,薬疹という疾患にそれほど多くのページ数を割り当てられていませんが,福田英三先生の「薬疹情報」やD. E. R. M.(Drug Eruptions & Reactions Manual, informa healthcare)にまとめられているように「ギョギョ」とするほど膨大な情報量が,論文や学会発表として集積されているわけで,それらの情報のひとつひとつを,魚のうろこを数えるように丁寧に分析していくことは重要に思えます.
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