Derm.2012
乾癬治療の変化
伊藤 寿啓
1
1東京慈恵会医科大学皮膚科学講座
pp.11
発行日 2012年4月10日
Published Date 2012/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103278
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私が乾癬に関わりはじめ11年が経過した.諸先生方からすると「たった11年?」と思われると思う.しかし近年の乾癬治療を取り巻く環境は大きく変化した.シクロスポリンMEPCや活性型ビタミンD3外用薬の登場,ナローバンドUVB療法の導入だけでも大きな変化を感じたが,2年前に2剤,1年前に1剤の生物学的製剤が乾癬へ適応となった.従来の治療で難治であった皮疹が消失し,そのインパクトはかなりのものだった.早期承認に至るまでは,医師側だけでなく,乾癬患者友の会を中心として行った驚異的な数の署名も功を奏した.
ネット社会や患者会の発展とともに,患者さんも自身の病気について,情報を得る環境が多くなった.そして外来に「乾癬にすごく効く薬ができたということを聞いたのですが….」ということで来院される患者さんも増えた.それは,これまで十分な治療を行っていない患者さんの掘り起こしでもあった.しかし,すべての患者さんで使える訳でなく,使用に際しては制約も多い.生物学的製剤が適応できない患者さんに,「他の治療を行ってみましょう」と提案すると,やや不本意そうな顔をする人もいるが,従来の治療で十分な効果が得られる症例も多く,その場合,診察時に治療に満足していただいている様子がうかがえると,提案してよかったなと思う瞬間である.そしてまた今日も乾癬の患者さんを診察する日々が続く.
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