特集 高齢者の耳鼻咽喉科・頭頸部疾患—治療とリハビリのてびき
9.高齢者の薬物療法の一般的注意
⑥高齢者の抗菌薬の使用について
伊藤 博隆
1
,
馬場 駿吉
1
1名古屋市立大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.169-172
発行日 1998年4月30日
Published Date 1998/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902718
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はじめに
現在,外来患者や入院患者に高齢者の占める割合が多くなりつつある。今後その傾向は著しくなり,来る21世紀は高齢者の時代と言われている。高齢者では加齢によって生理機能,免疫機能の低下がみられ感染症に罹患しやすくなっている。つまり,上気道では線毛機能が低下したり,また免疫機能の低下による抗体産生能,免疫応答も低下してくる。また,感染が起こっても各種の状況(半身不随,老人性痴呆など)によって,感染が見落とされることもある。また,高齢者には後述するような種々の感染症の特異性がある。したがって,感染に対する対応が遅れることも注意しなければならない。耳鼻科領域でも高齢者の治療に直面することも多くなったにもかかわらず,投薬量について小児ほど高齢者に対して関心がもたれていなかった。近年,高齢者と薬剤の関係について注目され,最近発売された薬剤には高齢者についての薬用量について記載がされるようになってきた。しかし,過去に発売されたものには研究論文はあるものの,データーとしてまとまったものはないのが現状である。われわれ耳鼻科医にも今後高齢者の実態を把握して感染症の治療に対応していくことが求められている。
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