トピックス 今話題の花粉症
3.オオバヤシャブシ花粉症
小笠原 寛
1
1兵庫医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.107-111
発行日 2001年2月20日
Published Date 2001/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902303
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はじめに
ブナ目カバノキ科ハンノキ属の樹木は根粒をもつため痩せ地に適し,根が深く成長が早いことから砂防用として江戸末期から用いられている。最も多用されている樹木は伊豆半島を原産地とするオオバヤシャブシ(図1)で,ほかにヒメヤシャブシとヤマハンノキがある。オオバヤシャブシ花粉に対するIgE抗体の吸収試験では,これらハンノキ属花粉ではほぼ100%,シラカンバでは84%,ブナ科のコナラとクヌギでは61%のIgE抗体吸収がみられた。これら花粉飛散時期に症状発現することからもハンノキ属花粉症カバノキ科花粉症さらにブナ目花粉症として捉える必要がある。ハンノキ属樹木は全国各地だけでなく,ヒマラヤの崩壊地においても盛んに植栽されており,世界で注意すべき花粉症となっている。
阪神地区の北にある六甲山や中山山系などでは,この地区に自生していなかったオオバヤシャブシが大量に植栽された。これは荒れる六甲山系の治山の目的だけでなく,1960年代頃から宅地造成や道路建設時に安価な緑として盛んに用いられた。この結果,空中花粉数が増加したと推定される1980年代後半から花粉症の発生をみるようになった1)。
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