特集 外傷と耳鼻咽喉科
IV.喉頭・気管・食道
1.外力による喉頭外傷
田山 二朗
1
1東京大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.104-109
発行日 1997年5月30日
Published Date 1997/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901606
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■はじめに
喉頭は,前方は前屈した下顎,下方は鎖骨,後方は頸椎により保護されていることから正面からの外力を受けにくく,また頸部において種々の筋肉により保持され,側方への可動性に富んでいることなどからも,比較的損傷しにくい器官であると言われている。しかし,大きな外力が直接前方から喉頭に及ぶと,後方に脊椎があるため,前後から押しつぶされる形になり多彩な損傷を起こし,呼吸・発声・嚥下の障害を引き起こす。交通事故・産業災害はもちろん,最近盛んになってきているスポーツでの外傷も増える傾向にある。
外傷はその受傷機転により,咽頭,喉頭の内腔からの損傷である内損傷と,外頸部からの損傷である外損傷に分けられる。また外損傷は皮膚損傷のない閉鎖性損傷と開放性損傷とに分けられる(表1)。一方,治癒機転からは新鮮外傷,陳旧性瘢痕性外傷とに分類できるが,陳旧性瘢痕性外傷は喉頭気管狭窄といった病態をとることが多く,これは初期治療が不十分のときに起こりやすい。
本稿は外力による喉頭外傷の特に初期治療をテーマとしているが,新鮮例に遭遇するのは一般耳鼻咽喉科医としてはそれほど多いことではない。耳鼻咽喉科医が治療を行うときにはすでに瘢痕性狭窄を引き起こした状態になっている場合もある。そこで本稿では,本来の初期治療が必要な新鮮外傷例のみだけでなく,陳旧例についても若干触れることにする。
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