トピックス 口腔疾患の診断と治療
4.口腔・咽頭と性感染症
荒牧 元
1
,
余田 敬子
1
1東京女子医科大学附属第二病院
pp.114-119
発行日 1997年2月20日
Published Date 1997/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901534
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
1948年,性病予防法が制定された際,性病は性交によって感染する疾患としてわが国では梅毒,淋病,軟性下疳,鼠径リンパ肉芽腫(第四性病)の4種を指すものであった。しかしこれらに該当しない,性行為で感染する疾患が増加したため,1975年WHOの提唱により,従来の性病も含め20種以上の病原微生物による性行為で感染する疾患を性行為感染症(sexually transmitted dis-eases:STD)と呼ぶようになり,さらに1988年日本性感染症学会発足に際しSTDを性感染症と称するようになった。わが国においては第二次世界大戦後,梅毒や淋病などの性病の蔓延をきたしたが,ペニシリンなどの抗生物質の発達や公衆衛生,予防医学の普及により一時鎮静化した。しかし近年,性の開放,性行為の多様化,ピルの使用,性風俗産業の台頭により1980年頃よりSTDが再び増加してきた。特にフェラチオなどにみられる性行為の多様化は口腔・咽頭に種々のSTDの発症をもたらし,さらに口腔・咽頭が淋病やクラミジアの感染源になりうると報告されている10)。そのため耳鼻咽喉科医はSTDを考慮しながら日常診療を行わなければならない状況となった。現在最も注目されているAIDSにおいて,口腔のカンジダ症や毛様白板症などは口腔や咽頭に早期に生じやすく,そのためこれらの症状所見がAIDSの発見の手がかりとなる。主な口腔・咽頭のSTDについて述べる。
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.