目でみる耳鼻咽喉科
難治性口腔・咽頭潰瘍
稲木 勝英
1
1北里大学医学部耳鼻咽喉科
pp.342-343
発行日 1993年5月20日
Published Date 1993/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900712
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日常臨床で遭遇する口腔・咽頭の潰瘍性病変のうち原因不明で治療抵抗性の疾患をいわゆる難治性潰瘍として扱っている。しかし,この疾患の定義もなく,また,疾患概念もつかめていないのが現状である。そこで,我々は,口腔・咽頭に生じた不定形の潰瘍性病変で,様々な検査でその原因をみいだすことができず,再発傾向を持ち,さらに適切な治療が行われないと1カ月以上も治癒しない病変を難治性潰瘍と定義し,ひとつの疾患と考えている。
この疾患は30〜40歳の男性に多くみられ,肉眼所見上,潰瘍は周囲に発赤や腫脹を伴わない不定形で,しかも天疱瘡や類天疱瘡などの水疱症や再発性アフタ性口内炎よりも深めの潰瘍であり(図1〜4),比較的軽度の瘢痕を残して治癒し(図1右),また,治癒と病状の進行が共存する(図1,3)という特徴がある。主病変の部位は咽頭特に口蓋扁桃を中心とした部位に生じることが多く,また,病変の広がりからみると口蓋扁桃に病変が認められるものは,口蓋扁桃に限局するもの(図2),口蓋扁桃より主として口腔側へ広がるもの(図1),さらに主として咽頭側へ広がるもの(図3,4)がある。これらの部位と同時もしくは前後して口腔(特に舌)や喉頭蓋や下咽頭に多発(図3右,4右)するものもある。主病変の出現前後および随伴して再発性アフタ性口内炎を伴う症例が多く,さらに非常に高い確立で潰瘍およびアフタ病変が再発をする。
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