トピックス 聴力改善手術
アブミ骨手術(耳硬化症)
八木 聰明
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.1073-1076
発行日 1990年11月20日
Published Date 1990/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900191
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
耳硬化症は白人に多く,有色人種には少ないことは周知の事実である。したがって,耳硬化症は本邦では,比較的稀な疾患とされていた。しかし,最近の報告はその傾向が少しずつ変ってきていることを示している。すなわち,以前に考えられていた率よりも,日本人の耳硬化症の発症の率は高いのではないかという報告がされてきている。白人では100人に1人の割合で耳硬化症が発症するという報告1)があるが,本邦では1,000人に1人の割合で発症するのではないかとの推測もある2)。これは,以前に考えられていた発生率より圧倒的に高い数値である。
実際,著者の行ったアブミ骨手術の経験でも,その数は増えている。すなわち,最近の約11年間に行った耳硬化症に対するアブミ骨手術数を前半と後半のそれぞれ5年半ずつで見てみると,前半の5年半の間に手術を行ったものが10耳であるのに対し,後半の5年半の間に手術を行ったものは34耳と3倍強になっている。もちろん,この増加は診断法の向上や,耳硬化症に対する意識の変化に負うところも多いと思うが,耳硬化症がそれほど稀な疾患ではないことを裏付けている。とは言っても,やはり耳硬化症はそれほど多い疾患ではなく,同じ約11年間に著者が行った鼓室形成術数1,178耳の1/27にしかならない。
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.