トピックス 顔面神経麻痺
顔面神経麻痺の病因と麻痺程度の評価法
中村 光士郎
1
,
柳原 尚明
1
1愛媛大学医学部耳鼻咽喉科
pp.539-543
発行日 1990年7月20日
Published Date 1990/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900092
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A.顔面神経麻痺の病因
耳鼻咽喉科の臨床において遭遇する顔面神経麻痺はほとんどが末梢性麻痺である。麻痺の原因は障害部位によって若干異なり,障害が脳幹から内耳道底までの間にあって起こる頭蓋内麻痺では,聴神経腫瘍や小脳橋角部腫瘍と,その手術損傷が原因となることが多く,内耳道底から茎乳突孔までの顔面神経管内で起こる側頭骨内麻痺では,ベル麻痺,ハント症候群,頭部外傷,中耳炎,腫瘍などによることが多い。茎乳突孔より末梢で起こる側頭骨外麻痺の原因は耳下腺腫瘍,なかんずく耳下腺癌と顔面外傷が主なものである。表1の当科顔面神経外来における原因別頻度に見られるように,側頭骨内麻痺の頻度が最も高く,なかでも全体の60%は臨床的に明らかな原因を特定できないベル麻痺である。この傾向は世界的にほぼ共通しており,その原因解明に努力が払われている。本稿では,まずベル麻痺の原因として注目されている最近のトピックスを紹介し,側頭骨内麻痺のその他の病因については診断上特に注意すべき点について言及することとする。
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