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手術を施行するにあたり,鉗子や器機を上手に使いこなす「メスさばき」と並んで重要なのが解剖の知識でしょう.マクロ解剖はもちろん,内視鏡下の解剖や顕微鏡下の解剖も含め,人体の正常構造を熟知しているからこそ疾病による構造の変化に対峙できます.一方,各種の画像検査は,術前に疾病の性状や拡がりを確認するためのものですが,画像診断にも解剖の知識は欠かせません.手術が上手な先生は,2次元的な画像から得られる情報を頭のなかで3次元的に構築し,病変部位と周辺臓器のイメージをしっかり持って手術に臨みます.術中,臓器を切り開いて病変に到達し,周囲の正常組織を傷つけることなく病変を取り除く.この過程において,例えば「この臓器の裏側には何があるか」「ここを切るとその奥に何があるか」など,解剖の知識を駆使して3次元的なイメージを術野に重ね合わせることで瞬時に判断し,手術操作を進めていきます.これができるようになると,手術が飛躍的に安全かつ円滑になります.
術前カンファレンスはどの病院でも必ず開催するものですが,術者だけでなく,手術に直接関わらない医師も含めた多人数が1つの画像を診ることで,術前診断や術式の確認はもちろん,カンファレンス前には気が付かなかった画像所見が発見され,術式が修正されることもあります.また過去の経験から術中に注意すべき点を指摘してくれる医師もいます.筆者がまだ研修医のころ,画像カンファレンスといえばシャーカステンにX線やCT画像のフィルムを貼り出し,それを供覧しながら症例のプレゼンをしていました.それはそれで準備が大変で緊張の連続でしたが,今は医療画像管理システム(PACS)により複数の画像を並べて提示したり拡大したり,供覧方法は自由です.2020年からのコロナ禍を受け,カンファレンスはウェブでの開催が主流になりましたが,画像カンファレンスはセキュリティさえしっかり整っていれば,ウェブ上でその価値がさらに高まると考えます.
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