特集 耳管診療の手引き—基本から最新治療まで
扉
小川 郁
1
1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.613
発行日 2019年7月20日
Published Date 2019/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411202135
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
耳管は成人では35〜40mmの長さの管腔器官であり,鼓室と上咽頭をつないでいる。耳管骨部は側頭骨内の骨性管腔構造で,側頭骨を出た耳管は耳管軟骨部となり,頭蓋底を走行し,上咽頭の耳管咽頭孔に開口する。耳管鼓室口は鼓室を開放すれば確認でき,耳管咽頭孔は鼻腔からの内視鏡で観察可能であるが,その全体を手術的に明視下におくことは困難であり,まさにno man's landともいえる器官である。耳管は音を効率的に中耳から内耳に伝えるために機能する器官であり,鼓室内圧が外気圧と同じになるように日常的に機能している。昨今の住環境・移動手段の変化によって,高層住居のエレベータ移動や新幹線・飛行機での移動など,外気圧の急激な変化に曝されることが多くなっていることからも,耳管の果たす役割は重要になってきているといえる。
耳管疾患としては耳管狭窄症と耳管開放症が代表であり,特に耳管狭窄症は古くから知られており,Politzer法やValsalva法による治療が行われてきた。PolitzerやValsalvaの時代から問題となってきた疾患であるといえる。一方で耳管開放症は比較的新しい疾患概念であり,日本耳科学会による耳管機能検査マニュアル(2004年初版,2016年改訂)および耳管開放症診断基準案2016が作成され,新しい疾患概念として定着している。なお,耳管狭窄症に対するバルーン耳管開大法などの新しい治療法に対応するために,耳管狭窄症診断基準2018も作成されているように,耳管を取り巻く問題は急速に,かつ新しく展開しているといえる。
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.