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「頭頸部の臨床画像診断学 改訂第3版」が発刊された。著者である尾尻博也先生は頭頸部領域の画像診断の第一人者であることはご存じのとおりである。今回の改訂は新たな疾患概念の登場と確立,頭頸部癌治療における治療後の画像診断の重要性が増したことなど,臨床側の変化が理由に挙げられている。第2版の発刊後4年弱経過しているがその間,頭頸部がんの治療は大きな変貌を遂げた。咽喉頭がんに対する経口的手術,新規薬剤の登場,化学放射線治療や分子標的薬併用放射線治療の普及と救済手術など治療法は多様化を極めている。このような状況下で体系的な成書を速やかに発刊されたことは,臨床面の変化を敏感に捉え,治療選択の判断に必要な情報は何であるかということを常に考えておられる結果であろう。
本書では各部位の臨床解剖に加え,臨床病態の解説,腫瘍性疾患の進展様式や治療効果予測,術式,治療効果判定に至るまで,病態そのものを放射線画像診断でいかにとらえるか,それを治療にどう結びつけその結果をいかに評価すべきか,という尾尻博也先生の放射線診断学への姿勢が感じられると同時に,非常に多岐にわたる臨床面での知識の豊富さに感嘆させられる。治療方針の決定は基本的には病態の解析の上に成り立つものである。放射線診断と頭頸部外科と専門を異にするものであるが基本となる考え方を共有できることは本書の魅力の1つである。今回,悪性疾患以外にも新たな疾患概念としてIgG4関連疾患が取り上げられ,リンパ節に関しては転移性のリンパ節だけでなく非腫瘍性リンパ節病変についても加わった構成となっている。豊富な画像所見と,臨床分類や診断基準,病期診断を配置することできわめて実用的に整理されており,診断と治療,放射線診断医と治療者を有機的に結びつける力をもつものである。
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