トピックス 耳鳴
耳鳴と心身医学
朝隈 真一郎
pp.997-1001
発行日 1989年11月20日
Published Date 1989/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200453
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
耳鳴の発生する機序や,耳鳴が人を悩まして病気として成立する過程を考える場合,心理的な因子が大きく関与するであろうことは疑う余地はない。耳鳴症の患者を治療するにあたって,その患者の耳鳴に心理的因子がどのように,またどの程度に関与しているのかを適正に評価して,それに応じた心身医学的なアプローチが必要なことは多くの先生方が感じておられることとおもわれる。耳鳴症の治療に,精神安定剤が頻繁に使用されている事実も,そのことを暗示している1)。
耳鳴についての研究は1970年代中ごろから欧米で盛んになった。我が国では1970年代の終頃から耳鳴の研究が盛んになり,耳鳴の検査法について大きな成果が得られた。また,治療法についても,キシロカイン鼓室内投与,キシロカイン静注,抗けいれん剤投与,マスカーなど様々の試みがなされて,一定の成果をおさめている。しかし,耳鳴に対する心身医学的な分析研究はいまなお不十分であり,多様な心身医学的治療を,具体的にどのように日常の臨床に取り入れていくかという問題は殆ど手つかずで残されている。ここでは,耳鳴と心理的因子の関わりについてあらためて知識を整理して,耳鳴症の心身医学的な治療の可能性について考えてみたい。
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.