特集 ウイルス感染症
II.ウイルス感染症
かぜ症候群
梅津 征夫
1
1北海道立小児総合保健センター小児内科部
pp.877-883
発行日 1988年10月20日
Published Date 1988/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200237
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I.総論
1.概念
"かぜ"という表現は私たちの日常生活の中でしばしば使用される言葉であり,わが国の一般外来患者を診察する医療施設では患者の過半数が"かぜ"と診断されていることから,医師が診療活動の中で使用する頻度が最も高い病名といえる。
"かぜ"という病名がもつ疾患概念に対して,使用する医師の間に多少の見解の相違が存在する。すなわち比較的軽症の急性鼻咽頭炎を意味して使われる例から,上気道炎に合併した下気道炎までを意味して使われる例まで,その疾患概念の幅は広い。"かぜ"という病名がこのように多少のニュアンスの違いをもって使用されることは,気道感染症に対する研究,解明の進歩という歴史的経過からみると,ある程度の必然性がうかがわれる。いわゆる"かぜ"症状を呈する疾患の原因のほとんどはウイルス感染であり,ウイルス学の進歩により原因ウイルスの種類とその性質などについて多くの知識が積み重ねられ,同一感染源が気道の解剖学的に分けられる各部位の炎症を単独にまた時には併せて起こしうることや,全く別種類の感染源が同じ臨床病型を起こしうることなどが明らかにされてきた過程で,"かぜ"という言葉が医学的に曖昧な意味をもつようになってきている。このような"かぜ"の概念,定義に関する種々の問題点については,田崎ら1,2)の論文に詳しく記載されている。
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