特集 急患・急変対応マニュアル―そのとき必要な処置と処方
序文
丹生 健一
1
1神戸大学医学部耳鼻咽喉科頭頸部外科
pp.5
発行日 2013年4月30日
Published Date 2013/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102436
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急変時の大原則は,まず,A(airway),B(breathing),C(circulation)に従って生命の維持を確保することである。続いて,病態を正確に把握し,緊急度に従って治療方針を決定することとなる。耳鼻咽喉科領域の救急疾患には,急性喉頭蓋炎,扁桃周囲炎・膿瘍,深頸部膿瘍などの感染症,顔面骨折・側頭骨骨折などの外傷,気道・食道異物,鼻出血,めまい,と多岐にわたる。急性喉頭蓋炎や深頸部膿瘍,喉頭外傷や気道異物などは即生命にかかわり緊急の対応が求められ,一見,単純な外傷性鼓膜穿孔や顔面打撲にみえても内耳障害や視力障害をきたしている場合など,直ちに生命にはかかわらなくても,治療のタイミングを逸して重篤な後遺症を残す疾患も少なくない。多忙な外来診療中,あるいは夜間の救急外来など,限られた時間や設備,人員のなかで「帰宅させてよいか?」「入院させるべきか?」「高次機能病院へ搬送すべきか?」「搬送中に急変するリスクはないか?」など,瞬時に的確な判断が求められる。
いつ遭遇するかわからない多彩な急性疾患・急変病態に適切に対応するためには,日ごろからこれらの疾患・病態について精通しておくことが必須である。本特集号では,耳,鼻,口腔・咽頭,喉頭・頸部の各領域から代表的な急性疾患・急変病態,処置や周術期の合併症を取り上げ,各領域のエキスパートにより「病態の把握と緊急度の判断」と「入院や搬送の判断のポイント」が解説されている。ぜひ,本書を外来デスクに常備し,できれば一度通読し,突然の出来事に備えていただきたい。
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