特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅸ.腫瘍性疾患診療NAVI
2.唾液腺腫瘍
河田 了
1
1大阪医科大学耳鼻咽喉科
pp.254-257
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102168
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Ⅰ 疾患・症候
唾液腺腫瘍には大唾液腺(耳下腺,顎下腺,舌下腺)由来のものと小唾液腺由来のものがあるが前者のほうが断然多い。そのなかでも頻度が高い耳下腺腫瘍について主に述べることにする。
耳下腺良性腫瘍は病理組織学的に10種類に分類されているが,その90%程度が多形腺腫あるいはワルチン腫瘍である。多形腺腫は,悪性化することがあること(多形腺腫由来癌),緩徐に増大することから,一般に手術適応である。腫瘍は小さいほうが顔面神経温存にはより有利であるから,診断が確定した時点で手術を勧めている。一方ワルチン腫瘍は,穿刺吸引細胞診(FNA)などで診断が確定しているならば,特に高齢者に多い組織型でもあるから経過観察を選択してもよい。ワルチン腫瘍に対して手術を施行する利点としては,整容的な面と組織学的に確定できることである。一方,悪性腫瘍は絶対的手術適応である。ただ悪性腫瘍は,病理組織学的に23種類に細分類されており,それぞれの組織型で悪性度は著しく異なる。5年生存率でいえば,90%以上のものから20%以下のものまである。耳下腺癌の予後規定因子はステージと組織学的悪性度である1)。そのため術前診断がきわめて重要になる。しかし,悪性腫瘍に対するFNAの正診率は不良であり,画像診断,術中迅速診断(FSB)を活用する必要がある。特に低悪性腫瘍の診断は時に困難であり,安易に良性腫瘍と診断して,術後診断で悪性が判明することがある。耳下腺腫瘍の場合圧倒的に良性が多いが,FNAをはじめとした術前診断で多形腺腫かワルチン腫瘍と診断されない症例について,悪性を疑ってみる必要がある。
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