書評
病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方 IDATEN感染症セミナー
柳 秀高
1
1東海大学・総合内科学
pp.156
発行日 2012年2月20日
Published Date 2012/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102072
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日々の診療に必要な知識を築くのに有用な一冊
この本では,病棟やICUで感染症診療を行うとき,また相談を受けたときに必要とされる知識の多くがわかりやすく解説されている。サンフォードマニュアルのような網羅的なマニュアル本ではなく考え方の筋道が書いてある。総論では病院内での感染症診療の一般原則や免疫不全総論などがよくまとめられている。感染臓器と患者の免疫状態,基礎疾患などから起因菌を推定し,empiric therapyに用いる抗菌薬を決める。培養が返ってきたら最適な抗菌薬を決めてdefinitive therapyを行う。抗菌薬の投与期間の決定については各論で提示されるケースでは議論されないが,各項目の概説のなかで語られることが多いように感じた。
人工呼吸器関連肺炎やカテーテル関連血流感染・尿路感染などの項目では,米国感染症学会などのガイドラインを用いてケースのマネジメントを説明している。あるいはケースを使って,ガイドラインを解説している。ケースの説明のみならず,疾患・ガイドラインの概説も行っているので全体像をつかむのによい。いずれのケースも基本的に感染臓器,起因菌の推定からempiric therapyを考え,培養結果などを用いて特異的治療を決定するという実践的な流れからぶれずに議論されており,日々の病棟での感染症診療や感染症コンサルタント業務に必要な知識を築くのに有用であると思われる。
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