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特集 耳鼻咽喉科における心因性疾患とその対応
3.耳鳴と聴覚過敏
3.Tinnitus and hyperacusis related to the psychogenic disorders
中川 雅文
1
,
荒木 謙太郎
2
Masafumi Nakagawa
1
1みつわ台総合病院聴覚センター
2みつわ台総合病院リハビリテーション科
pp.927-935
発行日 2010年12月20日
Published Date 2010/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101717
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Ⅰ.耳鳴
1.耳鳴診療の基本的な考え方
耳鳴は当人以外がその症状や徴候を確認することが困難な,きわめて自覚的な,『徴候・症状』である。また,患者は自分の窮状を適切なことばで伝えることができず,主観的かつ情意的なことば(不定愁訴)として訴える傾向が強い。そのような状況下で医師は『ことば』を通じて診療を実現することの困難さに戸惑い,患者は伝えられないもどかしさからさらなる不安を訴えてしまいがちである。医師・患者間でのコミュニケーションエラーが耳鳴の臨床を複雑化させているといえよう。
耳鳴診療を良い形に帰結させるためには,医師・患者関係において相互理解と信頼をまず確保する必要がある。必要にしてかつ十分な検査を論理的に進めていく作業は患者との信頼構築において大切である。医師自身の根気強い『傾聴,共感』の姿勢を維持しながら,問診を重ね,後述する疾患群の鑑別をしていくことこそが耳鳴診療の基本であろう。カウンセリングを通じて,耳鳴とその背景にある疾患との因果関係について十分理解させ,『患者の得心(ラポール)』を得させることが耳鳴診療のゴールとなる。
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