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Ⅰ.はじめに
頭頸部癌の治療は手術が中心に行われているが,進行した場合には放射線治療や化学療法を組み合わせた集学的治療が行われる。さらに近年では喉頭や咽頭を温存して発声や嚥下機能をできるだけ温存する試みが積極的に行われ,進行癌に対する化学療法の重要性が増している1)。
頭頸部癌に対する化学療法は従来からシスプラチン(CDDP)を中心にさまざまな併用療法が行われている。なかでもCDDPと5-FUの併用療法はKishら2)の報告以来,現在では最も多く用いられている。また,1980年頃より頭頸部癌に対して,すべての治療に先立って化学療法を行うネオアジュバント化学療法(neoadjuvant chemotherapy:NAC)が注目されてさまざまな報告がなされてきた3)。NACとしてのCDDP+5-FUの奏効率は70~80%との報告が多く,未治療例に対する化学療法として高い奏効率が注目された。そこで,NACの有用性を証明するために欧米においてさまざまな大規模な比較試験が行われた。しかし良好な奏効率にもかかわらず,NACを施行することによって生存率の向上や遠隔転移の抑制は得られなかった4)。そのためNACに対しては否定的な意見が多くを占めるようになり,現在では化学療法は放射線療法との同時併用において行われるようになっている。
しかし一方では,進行した頭頸部癌に対してNACが奏効した症例は予後が良いことが知られている。特にNACによって臨床的に完全奏効(complete response:CR)が得られた症例の予後は良好であり,そのような症例は放射線療法を追加することによって拡大手術を回避でき,その結果,喉頭などの臓器が温存されることが注目されるようになってきた5)。現在ではそのような考えから,NACを行ってその効果から臓器機能温存治療が可能か否かを判断するプロトコールが考えられ,特に喉頭の機能温存に対する大規模な比較試験が行われている。一方ではNACで使用する奏効率の高い多剤併用療法の開発が求められており,特にCR率の向上が重要と考えられている。CDDPと5-FUの併用療法は奏効率,すなわちCRとpartial response(PR)を合わせた割合は高いが,CR率は10~20%の報告が多く必ずしも良好とは考えられない6)。
一方,近年,タキサン系抗癌薬の頭頸部癌に対する効果が注目されている。タキサン系抗癌薬として現在,タキソールとドセタキセル(DOC)があるが,わが国ではタキソールはいまだ頭頸部癌に対して保険適用外である。
DOCはわが国で2000年より頭頸部癌に保険適用が認められ,頭頸部癌に高い効果を示し,特にCDDPとの併用効果が認められている。さらにDOCとCDDP,5-FUの3剤併用は高い奏効率を示し,CR率も従来のCDDPと5-FUの2剤併用と比較して高いことがColevasら7)によって報告され,注目されるようになった。しかしCDDPと5-FUにDOCを加えることにより副作用も増加すると考えられる。
頭頸部癌の化学療法は対象疾患や病期によりさまざまな目的があり,施行基準と除外基準をふまえ有効かつ安全に施行すべきである(表1,2)。
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