特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーション―症例を中心に
各論
4.頭頸部腫瘍術後の機能回復 4)喉頭摘出後の音声獲得 (3)シャント
岩井 大
1
1関西医科大学耳鼻咽喉科学
pp.211-220
発行日 2007年4月30日
Published Date 2007/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101104
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Ⅰ はじめに
無喉頭患者にとって早期の発声機能獲得はQOL改善のためにも重要な問題である。術後の失声に対する失望感や意思を容易に伝えられないことからくる疎外感,焦燥感は,一刻も早く取り除かれるべきである。このため欧米では,シャント発声や電気喉頭が第1選択として広く普及している。しかるに日本では,獲得までに半年またはそれ以上を要しかつ成功(明瞭な多音節発声獲得)率の劣る食道発声をいまだに第1選択としている施設が多い。また,全国の『無喉頭発声の会』のなかでは,食道発声の練習期間はこれに専念するため電気喉頭は禁止され発声の機会を与えられず,一方,食道発声が困難と判明してもしくは訓練から脱落して仕方なく電気喉頭に移行するという方針を取るところがある。したがって,電気喉頭が食道発声不能のシンボルのように考えられがちである。喉頭摘出を受ける患者の多くが比較的高齢であり,同じく加齢に伴い用いられる老眼鏡や補聴器は容易に使用されることを考えれば,手術を受けたのちさらに訓練が必要で途中の脱落者も多い1)食道発声より,電気喉頭やシャント発声のほうがより受け入れられやすく,無発声期間を短縮する発声方法であると思われる。ただし,シャント発声とともに食道発声を獲得した患者が,指で気切口を塞ぐ操作が不要で障害者と気づかれにくい食道発声を優先するのも事実である2)。電気喉頭もその仕草や抑揚の少ない不自然な発声のため,容易に障害者と気づかれる。したがって,シャント発声や電気喉頭を用いて早期から発声してもらい,次のステップとして食道発声にチャレンジするのが望ましいと考えている。
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