特集 上気道アレルギーを診る
12.臨床医に必要なアレルギーの基礎的知識
2)疫学
(1)スギ花粉症の疫学
今井 透
1
,
本田 靖
2
1聖路加国際病院耳鼻咽喉科
2筑波大学体育科学系
pp.199-205
発行日 2004年4月30日
Published Date 2004/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100596
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.はじめに
疫学とは,「明確に規定された人間集団の中で出現する健康関連のいろいろな事柄の頻度と分布およびそれらに影響を与える要因を明らかにして,健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるための科学」と定義されている1)。スギ花粉症に関しては,疫学調査でわかっていることはまだまだ限界がある。これまで多くの花粉症疫学調査が行われてきたが,有病率の全国比較が最近報告されたばかりである2,3)。さらに花粉症対策は,現在十分に満足される対策法が樹立されているとはいえない。特に治療期間が長くかかること,長期にわたって症状で悩みQOLが低下すること,十分な効果が得られる場合でも医療費がかかることが挙げられる4)。このような国民的な問題を解決していくためには,花粉症の発症機序や誘因となる様々な環境因子がどの程度関与しているかを判断することが必要である。多くの環境問題の解決には国を挙げての対処が必要であろうが,そのためには客観的な疫学的調査結果の集積が望まれる。
スギ花粉症の疫学に関しての総説が,これまでにいくつかまとめられている5~7)。特に,厚生労働省の補助を受けてガイドラインの中にまとめられたものは多くの論文をEBM的に検討しており,さらに膨大な資料がCD-ROMとして付録に付けられている8)。今回は2つの全国調査の結果とメタアナリシスを紹介する。次にわれわれが参加する機会を得た科学技術庁(現文部科学省)と東京都の調査を紹介し,電子疫学調査の可能性を示したい。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.