- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.はじめに
アレルギー性鼻炎と喘息は代表的な気道アレルギー疾患であり,最近ではone airway one diseaseの概念から,それぞれ隔絶した疾患と考えるのではなく,一気道アレルギー疾患として捉える国際的な趨勢にある。呼吸器という1つの臓器とみなす観点からすると,鼻と下気道の中間に位置する咽頭,喉頭,気管においてもアレルギーは標的臓器として成立し得ることになる。しかし,アレルギー性鼻炎や喘息のようにそれほど一般的なアレルギー性気道疾患とならないのはなぜであろうか。気道の中でバイパスのない喉頭や気管で鼻や末梢気道のように顕著なアレルギーが起きてしまうようでは容易に窒息をきたし,速やかに生命危機に陥ってしまう。こうした点から考えると,生体発生上これらの臓器は本来アレルギー反応が起きにくい臓器なのではないかと想定される。それゆえ,従来,喉頭アレルギーという診断名はあまり馴染みの深いものではなく,アレルギーに関する成書の中でもあまり目にすることはなかったものと思われる。
しかし,最近では,臨床的にスギ花粉症患者の多くが眼・鼻症状のほかに咽喉頭症状を訴えることが注目されたり,咽喉頭異常感症患者の中にアレルギーの関与を疑わせる症例がいくらか存在したり,慢性咳嗽患者にアトピー素因を有する者が多いことなどから,臨床的にノドにおいても慢性に経過するアレルギーがあるのではないかと多くの実地医家は疑い始め,その研究がされるようになった。肺に明らかな病変がなく慢性の咳嗽をきたす疾患として喉頭アレルギーが挙げられるが,そのほかにも鑑別すべき類似疾患が数多く存在する。
本稿では,喉頭アレルギーの鑑別疾患とその診断について,筆者らが行ってきた研究を中心に最近の知見を述べることにする。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.