特集 EBM確立に向けての治療ガイド
小児眼科
未熟児網膜症とEBM
吉村 圭子
1
1福岡市立こども病院・感染症センター眼科
pp.10-22
発行日 2001年9月28日
Published Date 2001/9/28
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410907493
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はじめに
未熟児網膜症は新生児の網膜血管の未熟性を基盤として酸素の影響により発生,進行する網膜血管増殖性疾患である。多くの血管増殖性疾患と同様,わが国では凝固治療が試みられ1,2),普及してきた。本症は失明に至る可能性がある一方で自然治癒傾向の強い疾患でもある。このことが諸外国において凝固治療の有効性を疑問視する一因であった。アメリカでは本症の活動期に対する積極的な治療は長く行われてこなかったが,1990年に冷凍凝固に関する多施設共同研究(CRYO-STUDY)がなされ,冷凍凝固の有用性が認められた3〜5)。その後,双眼倒像鏡用のレーザー装置の普及により光凝固に冷凍凝固と同等の有用性が認められ6,7),凝固治療の主流となっている。近年,新生児の全身管理は飛躍的に進歩したが,本症の基盤は未熟性であるだけに予防は困難で,出生児の救命率の上昇に伴い以前よりも超低出生体重児の割合が増加し,重症の未熟児網膜症が増えてきたともいえる。本稿ではレーザーなどの凝固治療を中心に本症の眼科的管理について述べる。
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