特集 オキュラーサーフェスToday
Ⅱ ドライアイとオキュラーサーフェス
涙液
渡辺 仁
1
1大阪大学医学部眼科学教室
pp.95-99
発行日 1997年10月20日
Published Date 1997/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410905609
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涙液は角結膜上を広がり,光が散乱することなく眼内へ侵入できるように眼表面をスムーズに整えている。また,涙液は角結膜上を防御し,維持する機能をもっている。こうした涙液は眼表面を広がることにより,その役割を発揮するわけであるが,そのメカニズムについてはまだまだ未解明な点が多く,涙液と角膜上皮,結膜上皮との関係にはさまざまな謎がひそんでいる。
従来より涙液の厚さは約7μmで,最表層より脂質(lipid)層,中間層をなす液(aquous)層,最内層の粘液(mucus)層の3層から構成されていると考えられてきた。しかし,最近では,涙液はこのようにはっきりと3層に分離して存在しているのではなく,特に粘液は角結膜上皮近くで最も密に存在し,上方にいくにつれ,徐々にその濃度が低下する濃度勾配をもって存在しており,従来の考えよりも涙液層の上方にまで広く存在すると考えられるようになってきている(図1)。粘液層の主たる構成成分であるムチン(mucin)は,従来より,結膜上皮内の杯細胞より供給されていることはよく知られている。しかし,最近,眼表面上には結膜の杯細胞由来のものばかりでなく,角膜上皮,結膜上皮もムチンを産生し,眼表面へ供給していることが明らかになった1〜4)。そうしたことより,これまでは涙液は涙液,角結膜は角結膜と分離して考えていたが,生体では2つが密接に関連しており,この2つを併せた形で考えないと本質を見失ってしまう。こうした観点から,ここでは涙液およびそれに関連する角結膜表層上皮について詳述する。
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