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眼底黄斑部(後極部網膜)には,臨床的名称と解剖学的名称があり,紛らわしい。とくに,日本語では「中心窩」,欧文では“fovea”という同一の用語が臨床と解剖とでそれぞれ異なった部位を指して使用されてきた。
従来,使用されてきた黄斑部の日本語および欧文の名称は次のようであった(表1)。視神経乳頭縁の耳側約3.4mmで,立位の状態で水平線よりやや下方の位置に直径約2.0mmの黄斑macula lutea,または略して単にmaculaがある。黄斑の中央は組織学的にはゆるやかな斜台clivusをもつ直径約1.5mmの浅い陥凹になっていて,これを解剖名で「中心窩」“fovea centralis”または単に“fovea”と呼ぶ。ここで,黄斑macula luteaは肉眼解剖による名称であり,中心窩fovea centralisは組織解剖による名称である。黄斑が黄色を帯びてみえるのは,神経節細胞や双極細胞内に含まれるカロチノイド,すなわちキサントフィルxanthophyllの存在によるものである。中心窩の中央にある底面は直径約0.3〜0.4mmの浅い陥凹で,感覚網膜の内穎粒層や神経節細胞層などの網膜内層を欠いている。これを解剖で中心小窩foveolaと呼び,臨床では検眼鏡でやや暗くみとめられる部で「中心窩」“fovea”と呼ぶ。中心小窩を中心にして直径5.0〜6.0mmの範囲は神経節細胞が2層またはそれ以上存在する部位,すなわち傍中心窩parafoveaおよび周中心窩perifoveaを含む範囲で,これを解剖では中心部area centralisまたは中心部網膜centralretinaと呼び,臨床では黄斑部macular areaまたは後極部網膜posterior retinaと呼ぶ。
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