特別講演
白内障手術の歴史(連載第3回)
三島 済一
1,2
1東京大学
2東京厚生年金病院
pp.1792-1795
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410904008
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日本では白内障はどう扱われたか
日本の医学では,白内障はどう取り扱われたか少し考えてみます。平安朝に丹波康頼が,「医心方」を著します。この「医心方」は,幾つかの写本が現在までに伝えられており,立派な本であります。慶応大学図書館に「医心方」の写本が陳列されております。京都の杉立先生が,この「医心方」の研究をされて,立派な本を書かれていますが,「医心方」の第1巻には,医の倫理というのが書かれておるということです。西暦で984年ですから,平安朝になってほぼ200年,中国から日本にもたらされたたくさんの医書を丹波康頼の解釈によって集大成したものと言われております。その中に清盲という言葉がありまして,おそらくこれが白内障を意味するものではないかと福島先生の医学史の本に書かれております。
実際に日本でcouchingが行われるようになったのは,室町時代の初期,1350〜60年頃からであると一般的に言われております。名古屋の馬嶋清眼僧都という方が,この方法を開発された。おそらく中国(明)から伝来したのではと思います。馬嶋流眼科の初代が清眼僧都でありまして,その後秘伝として代々伝えられ,現在の当主は37世の藤田保健衛生大学の馬嶋慶直教授であります。
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