特別講演
白内障手術の歴史(連載第2回)
三島 済一
1,2
1東京大学
2東京厚生年金病院
pp.1654-1657
発行日 1994年9月15日
Published Date 1994/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410903990
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天文学とレンズの発達の影響
白内障の手術は,前月号にあるように行われましたけれども,水晶体とか,眼の構造と機能の原理そのものは,まだ十分に理解されていなかったのであります。図8は,天文学者Johannes Keplerですが,17世紀に入りますと,天文学が非常に発達して,レンズも凸レンズだけでなく,凹レンズが導入されてまいります。ちなみに眼鏡は,一体いつ頃できたかといいますと,13世紀の終わりから14世紀の初め頃にイタリアで凸レンズを眼の前にかけるいわゆる眼鏡が発明され,グーテンベルグの印刷術とともにヨーロッパではたくさん本を読む人たちが増え,凸レンズを使ったいわゆる老眼鏡が普及してきたわけであります。このKe—plerの時代に凹レンズが導入され,凹レンズを眼にかければ,近視の人は,遠くを見ることができるということが発見されたのであります。これから眼の構造に関する知識というものが,だんだんと正確になってまいります。
図9は,やはりドイツ地方で出た天文学者Christophorus Scheinerです。この人は,Oculusという本を1619年に出しております。そこに書かれておる眼の構造が図10です。Georg BartischやLeonardo da Vinciが書いた眼の構造とは相当に違って,現在の我々の持っている知識に,かなり近くなっていることがよくわかります。ここでは,角膜とか,水晶体は,屈折のための構造物と理解されていることが,よくわかります。
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