Siesta
電子文房具
釣巻 穰
pp.176
発行日 1993年10月30日
Published Date 1993/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410901941
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コンピュータに類するものとの初めての出会いは,医学部の学生時代であった。実験結果の解析を紙と鉛筆と計算尺で繰り返していた。いい加減いやになったとき,たまたま出入りしていた教室に当時としては珍しいミニコンピュータが入った。テストと称して使わせてもらい,その解析の速さに驚いた。しかし,まだまだ使い勝手が悪く,これが将来文房具がわりになろうとは思わなかった。
次の出会いはワープロであった。私は自分の書いた文字が,自分で読めなくなるような悪筆である。卒業後しばらくして教室でワープロを導入した。机ひとつほどの大きさがある代物であった。日本語の入力が現在のように優れたものではなく,かろうじて単語ごとに可能なものであったが,自分の打った文字が真っ白な紙の上に黒々と印刷されてくるのは感動的であった。何のことはない文章が,立派な論文になったような気がした。数年後,どうにか個人で手がでる価格になるのを待ちきれないように購入した。紙と鉛筆の世界から脱出するための私の電子文房具第1号である。
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