Japanese
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連載 眼科図譜・315
皮下血腫を伴った上眼瞼の毛母腫
A pilomatrixoma of the upper eyelid with subcutaneous hematoma
大島 浩一
1
,
岡田 大造
1
,
松尾 信彦
1
1岡山大学医学部眼科学教室
pp.1532-1534
発行日 1992年11月15日
Published Date 1992/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410901382
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緒言:毛母腫は毛母細胞由来の良性腫瘍で,石灰化上皮腫と呼ばれることもある1,2)。本腫瘍は眉毛から上眼瞼にかけて好発し,若年者に多い。皮膚科領域ではさほど珍しくないが,眼科領域では注目されることが少ない。ただし臨床像を理解してさえおけば,多くの場合診断に迷うことはない。本症ではときに出血を伴うことがある3,4)。そして多量に出血して血腫を生じた場合には,臨床診断がむずかしくなる。筆者らはこのような血腫を伴った毛母腫を経験し,病理所見により初めて診断を確定することができたので,以下に述べる。
症例:患者は57歳の女性で,1991年8月頃,左上眼瞼に腫瘤を自覚した。腫瘤の色調は,はじめは周囲の皮膚と同じであったが,ゆっくりと増大するにつれて黒色調を帯びるようになり,同年10月3日当科を受診した。初診時,左上眼瞼中央部の瞼縁付近に,暗紫色で,縦10mm×横12mmのほぼ球形の腫瘤を認めた(図1)。腫瘤表面は健常な皮膚で覆われていたが,頂上付近の表皮は壊死に陥っていた。表皮下に拡張した血管がみられ,より深部に黄白色の組織塊が透見できた。腫瘤は太い茎を介して瞼縁の皮膚とつながっていたが,gray zoneを越えてはいなかった。腫瘤表層の血腫に相当する部分は軟らかであったが,内部には硬い芯を触れた。腫瘤と瞼板との癒着はなく,瞼結膜にも著変はなかった。
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