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連載 眼科図譜・297
後部硝子体膜症候群の硝子体手術の併発症としての神経線維束萎縮
Nerve fiber bundle atrophy-a surgical complication in membrane-peeling for posterior vitreous membrane syndrome
北川 桂子
1
,
荻野 誠周
1
Keiko Kitagawa
1
,
Nobuchika Ogino
1
1愛知医科大学眼科学教室
pp.462-463
発行日 1991年4月15日
Published Date 1991/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900576
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- Abstract 文献概要
緒言 黄斑網膜上に特発性に生じる膜状組織は接線方向の牽引から網膜皺襞,黄斑偏位,黄斑嚢胞,切迫黄斑裂孔などをおこす。視力障害をきたせば硝子体手術の適応となる。私たちは,比較的早期の手術適応,すなわち自覚する二段階以上の視力低下か,変視症を訴える場合に手術をしてきた1)。術中の網膜前出血,膜剥離直後からの一過性網膜表層混濁,術翌日の綿花様白斑の出現,術後3か月以降に核白内障の進行をみたが,重篤な併発症の経験はない。しかし綿花様白斑は,神経線維束萎縮の可能性を示唆する。このような神経線維束萎縮を3例経験した。
症例1. 56歳女性。5か月前から視力低下,1か月前から変視症を自覚。視力0.4。黄斑網膜上に放射状網膜表層皺襞と膜孔を伴う3乳頭径大の薄膜があり黄斑網膜は菲薄化,嚢胞状変化が著しかった(図1)。中等度の皮質白内障を伴っていたので,白内障嚢外摘出と後房レンズ挿入を併用して,膜除去手術を行った。微小鉤針2)で擦過して膜を引っ掛け剥離した。散在性の網膜前出血と網膜浮腫をみた(図2)。術翌日,膜剥離部に綿花様白斑が出現,1か月後,乳頭黄斑間に神経線維束萎縮を認めた(図3)。綿花様白斑と神経線維束萎縮の位置は一致すると思われたが,写真記録がないため確実ではない。黄斑嚢胞は消え,変視症も消失したが,視力は術後1年で0.5であった。
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