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現代の眼科診療,特に網膜診療において光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)は欠かせない機器となっています。単に病気の診断や治療の評価に用いるだけでなく,OCTによる網膜および脈絡膜構造の三次元的理解は疾患の病態解明にも大いに役立ってきました。最近ではコンピューター性能の向上によって画像取得の高速化,広画角化が進み,また長波長レーザーを用いたSwept-source OCTでは脈絡膜および硝子体のより詳細な観察と病態評価が可能となっています。さらに,現在,導入が広がりつつある網膜光干渉断層血管撮影(OCT angiography:OCTA)では造影剤なしで網膜の微小血管構造の描出が可能であり,また層別解析による血管の三次元的変化を捉えることができるようになりました。
本書は初版からちょうど10年を経て改訂されました。私は同書の初版も所有していますが,当初から京大眼科学教室の実力を大いに発揮された,通常のアトラスよりも一歩踏み込んだ内容に感銘を受けました。それは掲載される各画像の美しさだけでなく,当時最先端の解析方法や所見の記載,それを元にした病態解釈まで網羅されていることに大きな学術的意義を見ることができたからです。今回の第2版では,その後の10年間で得られたさまざまな新知見を盛り込み,さらに進歩した画像解析と病態解釈を提示したものとなっています。特にOCTAによって発見された数多くの知見は初版にはなかったものであり,それだけでも改訂による内容の大幅な向上を十分に感じ取ることができますが,本書では各疾患におけるOCTA所見とその解釈が大変詳細に述べられており,これは他に類を見ないものです。また,初版では記載の少なかった腫瘍,緑内障,視神経疾患の他にもpachychoroid spectrum diseaseやparacentral acute middle maculopathyのように,この10年間で新たに提唱された疾患概念もあり,第2版ではそれらもくまなく網羅されています。一方,滲出型加齢黄斑変性などよく知られた疾患においても,例えば従来の脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization)が黄斑新生血管(macular neovascularization)という呼び方に変わり,IS/OS,COSTと呼ばれていた所見がそれぞれellipsoid zone(EZ),interdigitation zone(IZ)という表現に変わりました。OCT所見において,新たに同定された所見を表す用語が増えたことはもちろんですが,特発性黄斑上膜の分類に見られるように同じ所見でも病態解釈の変化によって所見を表現する用語が変化した場合もありますので,それらのアップデートも第2版の重要なポイントになっています。
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