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待望の眼科辞典が出た! 23年ぶりの改訂である。この辞典は眼科の用語だけでなく,取り巻く関連分野の用語,略語も網羅しており,その簡潔な解説も秀逸である。著者のめざす「ことばの辞典」+「ことがらの事典」の融合を見事に具現化している。ご存じのようにこの20年余りの眼科学の進歩は目覚ましく,分子生物学の発展に伴う基礎研究,また眼光学,画像解析の発展に伴う臨床研究により,今や他分野と融合した眼科学が醸成の時期を迎えている。伴って眼科関連のことばは膨大な量となっており,初版では当然カバーできておらず正直いって最近は手に取ることがなかった。先輩の大鹿哲郎先生個人編さんである初版の事典のアップデートはそう容易ではないことは明白であったが,何と驚くべきことにこの第2版も先生個人編さんであった。目を疑う仕事量としかいいようがなく,あらためて大鹿先生個人の資質に脱帽する次第である。今回は約5000語を追加し,合計2万2000語以上を網羅している眼科関連用語のバイブルといえよう。いくらITを活用できるといってもそのご尽力は想像を絶する。
内容を見てみよう。まず,最初の単語は重要だ。英和の初発は,A(axis)軸,とある。眼科専門用語ではないが清々しくてとても良い。ぶれない軸を感じさせる出だしで大鹿先生の姿勢が見て取れる。次はAA(amplitude of accommodation)調節幅,調節力,続いてAACG(acute angle closure glaucoma)急性閉塞隅角緑内障があるのがうれしい。そしてまた,学会名も入っている。AAOや私の分野のWGC(world glaucoma congress)も網羅されている。略語の多い眼科ではとても実用的だ。最後の単語は和英の締めくくりで,ワンピース眼内レンズ(one piece intraocular lens)である。最初と最後が,軸と眼内レンズなのだから,偶然かも知れないがひそやかな大鹿先生の拘りだと私は思っている。首尾一貫しての姿勢が垣間見えてうれしくなる。さらに付録が秀逸だ。実際にはここだけ抜けるようにポケット版でも良いと思うが,最新の法令も含んでおり大変役に立つ。
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