増刊号 眼科基本検査パーフェクトガイド—理論と実技のすべてがわかる
Ⅱ 検査の診断・治療への活用法
眼窩・眼周囲組織にみられる腫瘍の診断・治療に関する検査
後藤 浩
1
1東京医科大学臨床医学系眼科学分野
pp.314-319
発行日 2017年10月30日
Published Date 2017/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410212486
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眼窩・眼周囲組織にみられる眼腫瘍の症状
眼窩腫瘍が診断に至るまでのプロセス
眼窩腫瘍の発見動機として多いのは眼球突出と眼球偏位,あるいは眼球運動障害に伴う複視などであるが,訴えとしては眼瞼の腫脹,すなわち「まぶたが腫れた」という表現のことが圧倒的に多い(図1)。あるいは,「目つきがおかしい」「顔の雰囲気が以前と違う」といった訴えのこともある。また,眼球突出によって相対的に眼瞼内反の状態となり,異物感の訴えが診断の契機となることがある。また,稀ではあるが,眼窩における血流の鬱滞により球結膜血管の拡張や蛇行,結膜浮腫のほか,腫瘍による眼球への圧迫が原因で網脈絡膜皺壁を生じたり,視神経への圧迫が視神経乳頭の腫脹やシャント血管を形成し,診断のきっかけとなる場合がある(図2)。
一般に視神経腫瘍などを除けば,視力低下や視野障害などの視機能障害をきたすことは稀である。涙腺原発の悪性腫瘍,特に腺様囊胞癌では,知覚神経への浸潤による眼窩痛が診断のきっかけとなる。いずれにしても腫瘤が眼瞼皮膚の直下に及ぶ場合には病変を直接触知することができ,診断につながる可能性もあるが,多くは上記の臨床症状や所見をもとに眼窩CTやMRIなどの画像診断検査が行われ,臨床診断に至ることになる。
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