連載 眼の組織・病理アトラス・32
網膜の血管構築
岩崎 雅行
1
,
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.888-889
発行日 1989年6月15日
Published Date 1989/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210818
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ヒトの網膜外層は脈絡膜血管から,内層は内顆粒層より内層に分布する網膜血管retinal vesselから栄養されている。一般に網膜動脈は網膜中心動脈central retinal arteryの分枝であるが,15〜25%の頻度で,毛様網膜動脈cilioretinal arteryと呼ばれる短後毛様動脈からの分枝が,視神経乳頭の耳側縁から出て乳頭黄斑間に分布することがある。網膜中心動脈は,強膜篩状板を貫いたのち,視神経乳頭において直角に曲がって網膜に侵入し,通常4本に分岐して,上耳側,下耳側,上鼻側,下鼻側のそれぞれの網膜動脈になる。これらの網膜動脈は,二等分岐あるいは側腕分岐を繰り返しながら次第に径を減じ,毛細血管前細動脈precapillary arterioleを経て,網膜毛細血管retinal capillaryに連絡する。毛細血管を通った血液は毛細血管後細静脈postcapillary venuleを経て網膜静脈に入り,分岐部で合流して次第に太い静脈に集まり,網膜中心静脈central retinal veinを通って眼外に運ばれる。
網膜の動脈系と静脈系は網膜のいたるところで交叉しているが,動脈どうし,静脈どうしの交叉はきわめて稀である。
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