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1968年Gassがacute posterior multifocal placoidpigment epitheliopathy(APMPPE)を報告して以来,網膜色素上皮に病変の主座があると思われる様々な病型が報告されている.その中で急性網膜色素上皮症は若い女性の片眼を侵し,眼底後極部から中間周辺部にかけて灰白色滲出斑が散在性にみられる予後良好な疾患である.本邦では鬼頭1),宇山2),中条3),竹田4),鈴木5)らが,欧米ではJampol6)らの報告がみられ,ひとつの独立したclinical entityを形成するものと思われる.今回著者らは,それらと同一と思われる1症例をパノラマ合成写真として記録できたので供覧する.
症例 は36歳の女性(AT,57-5420)である.初診の4日前に感冒に罹患し,その頃から左眼の羞明感があった.急激に左眼視力低下を来したために当科を初診した.初診時視力は右眼1.5(nc),左眼0.2(nc)であった.眼圧は右眼16mmHg,左眼12mmHgであった.右眼前眼部,眼底には異常なく,左眼は前房中に細胞(+)であった.左眼底は視神経乳頭の境界は不鮮明で充血し,黄斑部では灰白色の滲出性病巣は融合し,浮腫状を呈し,後極部から赤道部の病巣は1/2かは1/10乳頭径大で散在性に分布していた(図1).病巣の深さは網膜深層から網膜色素上皮のレベルであった.蛍光眼底造影では視神経乳頭は軽度の蛍光漏出を示し,滲出性病巣は造影初期からwindow defect様に過蛍光となった(図2).全身検査所見では血沈が1時間値35mmと亢進していた以外は麻疹,単純ヘルペス,水痘帯状ヘルペスなどのウイルス抗体価には著明な変動はなかった.以上から急性網膜色素上皮症の疑いにてプレドニゾロン30mgからの内服治療を開始し以後漸減した.2週間後には滲出性病巣は瘢痕を残すことなく消失し,左眼視力は1.2(nc)に改善した.
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