Japanese
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特集 手術
角膜移植術(部分層)
Keratoplasty
樋田 敏夫
1
Toshio Hida
1
1日医大眼科教室
1Dept. of Ophth, Nippon Medical college
pp.1463-1470
発行日 1958年11月15日
Published Date 1958/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410206483
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緒言
当教室では故中村康教授御指導の下に多年に亘り,多数例の角膜移植術を施行して来た。勿論その大部分は全層部分的角膜移植術である。
所が多数例の中には,手術の途中,何かの拍子で患者角膜の穿孔が不完全であつた時,取残された角膜の部分が(即ち患者角膜の深層部)案外透明で,下方の虹彩や瞳孔を良く透見出来る事に遭遇する。これは患者の角膜が比較的淡く斜照法や,細隙燈顕微鏡等で精密に検査すればその溷濁が表層に多いとか中層に存在するとか或いはデスメ氏膜,内皮細胞層のものであるとか区別出来ない事もない。然し,潤濁が濃厚で而も角膜全体を瀰蔓性に覆い,少しも透明な健康部がない時には,その溷濁はどの辺迄及んで居るかは窺い知れず手術途中で表層のみであつたとか,全層に亘つて溷濁が強かつたとかを知る事が多い。又取り去つた患者の溷濁角膜(勿論種々の角膜疾患で溷濁に終つたもの)を組織的に検索すると病変は表層のみに止り,デスメ氏膜や内被細胞層に迄変化が及んで居ないものが案外多いのを知る。トラコーマパンヌスや角膜フリクテン,表面だけの角膜外傷後の溷濁,角膜脂肪変性の初期等はもとより言うを挨たない。従つてこういう溷濁角膜に対する角膜移植には敢て危険な内眼手術に属する全層部分的角膜移植を行う必要はない。こういう見地から何とかして表面だけの角膜溷濁部を取り去り,その厚さだけの透明角膜片を移植する簡単な方法を研究するのは当然である。
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