臨床實驗
角膜移植に於ける角膜層差の影響
樋田 敏夫
1
,
中村 陽
1
1日本醫科大學眼科教室
pp.393-394
発行日 1952年5月15日
Published Date 1952/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201159
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緒言
昨年度,日眼總會に於て余は角膜移植後,不幸溷濁治癒した20例の移植片の組織所見を述べ,その溷濁は主として實質層の瘢痕化及び片後面に生ずる内被細胞性結締織膜にあり,此等はデスメ氏膜,内被細胞層の脱落による前房水の片内侵入に由來する移植片の自家中毒現象及び此れに對する防禦機轉の結果であると述べたのである。そして該兩膜の脱落の原因は授與角膜と母體角膜との厚さの差,言換えれば双方の各層の位置的ズレに依ると豫報致したのであつた。即ち双方の厚さに相違がなく,各層の位置がピツタリ一致すれば一番良いわけであるが,各種の炎症,變性,外傷等に依り,正常角膜と當然厚さを異にして居る母體角膜はどうしても第1圖の如く,各層にズレを生じ比較的,生活力旺盛な上皮層實質層は直ちに癒合するが極めて菲薄なデ氏膜及内被細胞層は間もなく榮養障碍に陥り脱落すると考える。
勿論,移植片が溷濁するのは,母體角膜の失明原因,薪生血管,健康部の状態前房の健否,虹彩癒着等,種々考えられるが此等を一應除外して,余等は今回23例の移植患者に就いて各患者の角膜の厚さと移植片(授與角膜)との厚さを比較,此が經過との比較を行い層差に關する此が豫後との一應の結論を得たので,報告する次第である。
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