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染色体異常と眼疾患
小林 守
1
1帝京大学
pp.92
発行日 1971年1月15日
Published Date 1971/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410204438
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- 文献概要
最近,染色体異常児に発症した先天性眼疾患の報告が欧米の文献に目立ちはじめている。一般に染色体異常には種々な眼疾患(無眼球症・小眼球症・網膜形成不全・瞼裂走向異常・Hypertelorism・斜視その他多数)が合併しやすいので,先天性眼疾患があり,しかも全身異常の著明な場合は一応染色体異常を考慮する必要があろう。染色体は周知の如く,細胞の核内にあり,染色体に遺伝子座位が含まれているので,染色体異常があれば,その異常の程度にもよるが,単一の遺伝子の突然変異による状症よりも重症となる場合が多い。たとえば,D群染色体(No.13〜15)のトリソミー(3染色体性)の個体では,流産や死産の場合が多く,かりに出生しても生命力に対する障害が強いので,生後間もなく死亡するケースが多い。そしてDトリソミーの眼症状としては,無眼球症や小眼球症,網膜形成不全症などのごとく極めて眼異常所見の強い患児が出生するのである。しかし,D群染色体よりも小形であるG群染色体(No.21,22)の21トリソミーでは成人にまで達するケースが多く,眼症状もDトリソミーよりは軽症である。この21トリソミーはモーコ症(Mongolism)とかダウン症候群(Down'ssyndrome)と呼ばれており,出生児600人に1人の頻度で発生している。
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