談話室
ハーバード便り—ボストンにて
坂上 道夫
1
1東邦大眼科
pp.1271-1272
発行日 1962年12月15日
Published Date 1962/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202616
- 有料閲覧
- 文献概要
ボストンに参りまして約半年を経過致しました。漸くハーバード医学部に於ける研究の動向が判つて参りました。自由揺藍の地としてのボストンは又,教育文化の中心として静かに沈んだ処ですが,他にマサチュセッツ工科大学,ボストン大学を始めとして多くの大学及びカレッジがあり,アカデミックな雰囲気の中にニューイングランド特有の練瓦の建物が古都としての面目を示し,史蹟,戦蹟がその歴史を偲ばせて呉れています。小生,マサチュセッツ総会病院の脳神経外科(主任は疼痛の研究と生理・生化学の権威ウイリアム・スイート博士)に籍を置き,神経化学の研究室に学んで居ります。研究室主任は,アデルバート・エームス三世氏で,その父君に当る人は,アニサイコニアの発見者であり,彼自身も眼球をProtobrainと考えて,中枢神経化学を眼科的に研究しているユニークな存在と考えられます。エームス氏の主な業績は,電解質化学で,特に超微量定量法と,電解質移送に関連したE.R.G.,膜電位測定法に特色がみられます。即ち,具体的には電解質移送問頭を今日のトピックである膜透過現象から研究し,特に血液房水関門,血液網液関門についての実験を行つているわけです。
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.